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臨床ニュース
睡眠リズムにセロトニン必須
セロトニンが生物時計のリズムを伝え、睡眠と覚醒を起こす
2012年10月18日 理化学研究所 カテゴリ: 精神科疾患・神経内科疾患・脳神経外科疾患

 理化学研究所は10月17日、脳内の生物時計を司る領域で生み出された24時間のリズムを、睡眠と覚醒を司る領域へと伝えるのが神経伝達物質のセロトニンであることを見いだしたと発表した。理研脳科学総合研究センターシナプス分子機構研究チームの宮本浩行氏らによる成果。

 宮本氏らは、セロトニン合成に必要なトリプトファンを選択的に分解する酵素(TSOI)を開発。投与により、脳内のセロトニンを数時間以内で5分の1程度に急速、選択的かつ可逆的に減らすことに成功していた。

 今回の研究では、ラットにTSOIを投与し、脳内のセロトニンを除去してその影響を調べた。ラットはより短い周期で睡眠と覚醒を繰り返し、リズムが崩れた。この状態下で、宮本氏らは生物時計の機能を司る視交叉上核(SCN)の活動を調べたところ、通常通りのリズムを維持していた。それに対して、睡眠と覚醒を司る前脳基底部・視索前野(BF/POA)では、リズムは顕著に崩れていた。

 さらに、宮本氏は、セロトニン受容体機能を阻害する薬物リタンセリンを、正常なマウスのBF/POA領域に局所的に投与。この結果、徐波睡眠のリズムが阻害されたことを確認した。

 これらの実験結果より宮本氏らは、SCNが生み出したリズムをBF/POA領域が受け取って、24時間の睡眠と覚醒の周期を起こしていると考え、その媒介役として、セロトニンが必要と結論した。今後、セロトニンとうつ病や不眠、睡眠リズム障害などの理解を深め、治療開発に貢献したいと述べている。