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臨床ニュース
うつと統合失調症をMRIで鑑別
約8割の精度で鑑別が可能
2013年7月18日 国立精神・神経医療研究センター カテゴリ: 精神科疾患・神経内科疾患・検査に関わる問題

 国立精神・神経医療研究センターは7月12日、うつ病と統合失調症をMRIで鑑別することに世界で初めて成功したと発表した。各疾患に特徴的な脳の形態を確認することで、約8割の症例で正確に鑑別した。センターは、補助診断法として臨床で役立つと期待している。神経研究所疾病研究第三部の太田深秀氏らの成果。

 現在、うつ病や統合失調症の診断は主に問診で行われている。客観性が乏しく、医師の診断能力や患者の協力がないと難しいという問題がある。研究グループは、疾患により脳の形態が異なることに注目。頭部MRIの検討により、うつ病では、統合失調症と比較して帯状回の膝下部に形態変化が起こりやすく、統合失調症では視床に変化が起こりやすいことが分かった。これらの違いを判別する式を用いて、うつ病患者25人、統合失調者25人のMRI画像を調べたところ、78%の正確さで疾患を鑑別。また、他の患者群(うつ病16人、統合失調症18人)で試しても79%の精度で鑑別できた。

 研究グループによると、MRIでうつ病と統合失調症を鑑別できたのは世界初。今回の研究は全て女性患者での検討だった。性別により脳の形態が異なるため、今後は男性患者でも鑑別できる方法を開発する予定という。

プレスリリース詳細
統合失調症やうつ病などの精神疾患は、患者の主観的体験を医師が問診によって聞き出し、それによって得られる情報に基づいて診断されており、客観性に乏しいことが問題とされてきました。統合失調症は病初期や経過中にうつ状態を呈することが多く、うつ病(大うつ病性障害)でも妄想を生じることがあることから、両者の鑑別が難しいケースが少なくありません。これらの2疾患は治療法が大きく異なるため、問診だけでなく、脳科学的方法によって鑑別する方法の開発が待たれています。国立精神・神経医療研究センター神経研究所 疾病研究第三部 太田深秀室長、功刀浩部長らのグループは、女性の統合失調症とうつ病とを鑑別する指標としてMRI(核磁気共鳴装置)により得られる脳の局所的な形態の違いを用いる方法を検討しました。25人の女性統合失調症患者と25名の女性うつ病患者の脳の形の違いに関してMRIを用いて測定した結果、およそ8割の正確さで2つの疾患を鑑別する方法を開発しました。さらに、同方法を別の患者群にあてはめたときにも同等の的中率で診断できました。これらの2疾患をMRIで鑑別する方法を開発したのは、世界で初めてです。
■研究の背景
現在、統合失調症やうつ病の診断は、幻覚や妄想、抑うつ気分などの症状の有無を患者に聞くこと(問診)で診断されており、脳科学的検査による診断法は行われていません。そのため、診断に客観性が乏しく、医師の適切な問診能力と患者の協力がないと診断できないなどの問題があります。しかし、脳画像解析技術の進歩により、統合失調症やうつ病などの精神疾患を診断するためのさまざまな検査法が開発されつつあります。近赤外光イメージング装置(NIRS)を用いた精神疾患の鑑別法やMRIを用いた方法が有望です。

MRI画像解析技術は急速に進歩しており、脳の小さな構造の体積や神経ネットワークなどについて詳細にみることが可能になるにつれ、統合失調症やうつ病では疾患に特徴的な脳の形態の違いがあることが明らかとなっています。そこで今回我々は、その脳の形態の違いに着目し、MRIからの情報から当該2疾患を鑑別する方法を開発しました。

■主な研究結果
国立精神・神経医療研究センター神経研究所 疾病研究第三部 太田深秀室長、功刀浩部長らは25人の女性統合失調症患者と25名の女性うつ病患者の頭部MRIの情報から疾患に特徴的な脳の形態の違いを検出し、その情報をもとに病気を鑑別できるか検証しました。その結果、うつ病と比較して統合失調症では大脳基底核周辺に存在する視床という脳領域に変化が認められやすいことが明らかとなり、また統合失調症よりもうつ病では帯状回のうち膝下部と呼ばれる脳領域に変化が認められやすいことがわかりました。これらの領域の形態の違いを示す数値を今回算出された判別式に導入すると78%の正確率で2つの疾患を鑑別することができました。さらに、同方法を別の患者群(女性統合失調症患者18名、女性うつ病患者16名)のMRIにあてはめた時にも79%の正確率で鑑別ができたという結果が得られました。

■今後の展開
これまでに統合失調症と健常群、うつ病と健常群をMRIによって鑑別する研究報告はありましたが、うつ病と統合失調症の鑑別についての報告は、世界で初めてです。この二つの疾患は治療法が異なりますが、問診による情報だけではしばしば鑑別が困難であるため、MRIを活用する方法が確立すれば、補助診断法として臨床で非常に役立つことが期待できます。ただし、本報告は世界で初であるため、この方法が再現されるかどうか、今後世界の他の研究機関で追試され、確認される必要があります。

一般に、統合失調症は疾患に特徴的な脳の形態が性別により異なることが知られています。そのため、今回の研究では女性患者のみを対象とした研究結果を報告しました。今後、男性の患者についても、MRIを用いたうつ病と統合失調症の鑑別する方法を開発する予定です。