臨床ニュース
5日の睡眠不足、脳から抑うつ
睡眠不足で不安感が強まる神経メカニズムを解明
2013年2月14日 国立精神・神経医療研究センター カテゴリ: 一般内科疾患・精神科疾患・その他
国立精神・神経医療研究センターは2月14日、わずか5日間の睡眠不足でネガティブな情動刺激に対する左扁桃体の活動が亢進し、不安、抑うつ傾向が強まる神経メカニズムを明らかにしたと発表した。精神保健研究所精神生理研究部の三島和夫氏ら研究グループの成果。
三島氏らは、実生活で体験し得る5日間の短時間睡眠をシミュレーションし、脳への影響やメカニズムを調査。健康な成人男性14人を対象に、8時間睡眠の5日間(充足睡眠)と、4時間睡眠の5日間(睡眠不足)を過ごしてもらい、それぞれ5日目に脳活動の変化を機能的MRIで測定した。
結果、睡眠不足の状態で「恐怖におびえる人の顔写真」を見た時だけ、左扁桃体の活動量が有意に増大していた。一方、「幸福な人の顔写真」を見せても反応は変わらなかった。つまり、睡眠不足時はネガティブな情動刺激に対してだけ反応しやすくなっていた。
このメカニズムとして、睡眠不足が扁桃体と腹側前帯状皮質の間の接続が弱くなっていることも明らかになった。通常、腹側前帯状皮質は扁桃体の過剰な活動を抑止することで情動制御を行っているが、睡眠不足で情動制御が弱くなっていた。さらに、左扁桃体の活動が亢進するほど不安と混乱が高まり、抑うつが強まる傾向も確認できた。
三島氏らは、この結果は、短時間の睡眠不足でも、不安や抑うつのリスクが増大することを示唆していると結論。「睡眠を犠牲にして勤勉であることが日本人の美徳と考えられてきた。このような生活が本当に効率的かつ持続可能なのか、考え直すべき時期に来ている」と述べている。