睡眠障害、体内時計22分狂う
世界初、概日リズム睡眠障害患者の体内時計周期の異常延長を確認
2012年8月16日 国立精神・神経医療研究センター カテゴリ: 一般内科疾患・小児科疾患・精神科疾患
国立精神・神経医療研究センターは8月14日、非同調型の概日リズム睡眠障害患者の体内時計では1日の長さが平均で24時間29分と異常に延長していることを世界で初めて明らかにしたと発表した。夜型生活者の一部でも同様の異常を確認し、生活リズムが破綻しやすいハイリスク群であることも見出した。精神保健研究所精神生理研究部の三島和夫氏らの研究グループによる成果。
概日リズム睡眠障害は、睡眠時間帯を社会生活に合わせることができず、本人の意思では治せない慢性疾患。明け方に寝て昼に目覚める「睡眠相後退型」と、睡眠時間帯が毎日約1時間ずつずれていってしまう「非同調型」がある。
三島氏らは、非同調型患者、夜間生活者、標準型生活者の3群で、昼夜や時間を全く分からなくした隔離実験室内で14日間生活してもらう実験を実施。ホルモン分泌や体温リズムなどを測定することで、体内時計の周期を精密に測定した。
結果、標準型生活者の体内時計周期は平均24時間7分であったのに対し、非同調型患者では平均24時間29分に延長していた。この22分の延長は、他のシミュレーション研究からも睡眠障害に深刻な影響をもたらすことが明らかになっており、異常な延長と考えられる。一方、夜型生活者の一部にも非同調型患者に匹敵する程の長周期を確認。実際に昼夜逆転に近い生活を送っていた。
三島氏らは、「夜勤従事者が就労者の2割以上を占める現代の生活環境下では、体内時計周期が体質として長い人は睡眠リズム異常の大きなリスクを抱えている」と指摘。今回の成果を、概日リズム睡眠障害の診断やハイリスク者の同定、治療予後の判定に応用したい考え。現在、患者の体内時計の調節にかかわる遺伝子の機能を解析し、周期をより簡便に測定する方法の開発を進めているという。
なお、「ヒトの体内時計周期は25時間」と言われるケースがある。これは古い方法での測定値で、誤りであると補足している。